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RexiのPBW第二弾の学園Xネタを此処で。
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と、誰かが漏らしても、決して気付くことはない。




シャロの妹のBADEDでのエピソード





わたしは明日、女神の元にいくのだという。
生まれてから母の顔もしらず、父の顔もしらない。
悪魔の子と呼ばれた、兄のすがたさえも知らない。
ただ、ずっと、ずっと、この塔にとじこめられている。

宣告が下ったのは、そう、昨日だったとおもう。
窓もなく、明かりもない、塔の上で育ったから
わたしには既に時間間隔すらないのだ。
「神の巫女の代替え品」
   
「呪われた巫女も役に立つ」
      
「これで儀式が行える」
          
「村の幸福がようやく」
扉の外からとぎれとぎれに聞こえる声は
幸せそうにはきこえない。
まるで悪意を濃縮させたよう。
これを浄化できるというのだろうか?
女神と言う、存在は。
違う。違うと思う。
だからこそ神の巫女……
わたしの従兄はこの村に帰ってこないのだと思う。


「いいなぁ……」
「なにが良いんだい?」


ぽつりとつぶやいた声に、返答する声。
振り返ると……片目を眼帯で隠したエルフが立っていた。
だれだろう? こんなひとはしらない。
不思議そうに首をかしげるわたしに、青年(だとおもう)は続ける。


「逃げたいのかい」


その言葉に目を開く。
逃げたい……わけではないと思う。
だってここには父も母も、兄も住んでいるから。


「みんなが幸せになるのに、逃げたいなんて思わないの」


驚くほど落ち着いた声でわたしは告げる。
その言葉にエルフの青年は「相変わらず巫女ってやつは……」と息を吐いた。
まるで、こんな言葉をいう誰かを知っているかのように。
彼はわたしの手を掴み、自分の方へと引き寄せる。
そこで私はようやく知った。
この部屋は壁と扉だけの部屋じゃない。
ちゃんと階段もあったのだと。ただ故意に隠されていただけで。
彼はわたしを引っ張り、外へと連れ出した。

広がったのは青い空。緑の森。
鳥たちのさえずりと、花の匂いを運ぶ風。
どこからともなく食欲をそそるような香りもする。
それはわたしが初めて見た、外の世界。
そして……最後の、外の世界……。

息を飲む音が聞こえた。
振り返るとエルフの青年が驚いたように立ちつくしていた。
その先には二人のエルフの……死体。
男性と女性だろうか。
エルフの青年が「父さん、母さん……」と呟き、わたしの手を取った。


「な、なに……?」
「逃げるんだ。この村は狂ってる」
「わたしは逃げない……巫女だもの」
「知ってる、でも……君はボクの妹だ!」


眼帯をとった先には赤い瞳。呪われたものと噂された瞳。
その瞳はわたしを見つめている。
ただただ真摯に。まもりたいんだと。
言葉にしなくても訴えていた。
わたしの幸せにしたかったのは

父と
そういえばあの青年はこの死体をなんと呼んでいた?
母と
信じたくない、信じたくない、信じたくない
兄……で……。
もう、わたしの幸せにしたい人がこの世に一人しかいないなんて。
思考の整理が出来ずに固まるわたしの手を取り
兄はどこかに向かって走り出す。


「伯父さんも、伯母さんも、もういない。
 巫女の責任を問われて自害させられた。
 父さんはそれに怒って……君を連れて逃げようって。
 父さんも、母さんも、あの塔の下で落ち合う約束だったんだ。
 みんなで、逃げる、約束で……」


ぽつりと。私の額にしずくが落ちる。
雨じゃない、泣いているんだ。
たくさんの人が不幸せになった不幸に。


「結局、ティースが死ぬのが、一番よかったのかもしれない」


こんなことになるのならと。兄は悔しそうにつぶやいた。
従兄の姿は、しっている。むかし、夢で、見たことがある。
ずっとずっと無表情で、でも兄に会って表情を覚えて
たくさんの友達と、仲間たちと、わらってた。
兄も少し困った顔をしてたけど、幸せそうに、笑ってた。
なのに、こんなことを……いうなんて……。
わたしは兄の手を振りほどく。


「……リア?」

「わたし、もどります」

「!?」

「いつか、だれかが、兄さまとおなじことをいうかもしれない。
 そのときに、またきっと、誰かが傷つくから」

それならわたしは命をかけよう。
戻る為に駆けるわたしを、兄は今度は引き止めなかった。


「巫女・イシュタリアよ。なにかを言うことはあるかね」
「……ありません……」
「ならば、その身を女神の元に……」

長い演説の最中に、わたしはゆめをみた。
きっと、この後に起こる、悲しいゆめ。

わたしがしんだあと、にいさまはこの村を燃やしつくす。
ひとりひとりにナイフを立てて、ひとりひとりに火をかけて。
さいごに戻ってきた村の生き残りをも手にかける
それは、あのひとが、さいごのさいごまでまもりたかったひと。
彼を手にかけて、にいさまはようやく幸せになれるんだ。
やっと……やっと……。

「がんばったね。僕の代わりにごめんね。ありがとう。おつかれさま」
「大丈夫、彼は僕が連れていくから」
「だから、ゆっくり、お父さんたちのもとで待っていてね」

意識は途中で暗闇に落ちていった。
たぶん、きっと、死んだんだとおもう。
ゆめをみてたから、そこの辺りはとても曖昧。
だけど、ひとつだけ、おぼえてる。
夢の最後でささやいてくれた声は。
きっと神の巫女の声だった……。



「イシュタリア」
優しい声で目を覚ます。
そこは花畑だった。
優しい風が吹いていて、みたこともない動物もたくさんいた。
ミルクの川にワインの噴水。たくさんの果実もなっていて。
さながら楽園のようだった。
そこには死んだと聞かされた、伯父も伯母も……。
死んでいたのを見た、父も母も笑っていた。
後ろから話し声が聞こえてふりかえると。

ああ、よかった。

困ったように頭をかく兄の姿と
優しく手を振る……従兄の姿がそこにあったのだ。






******************************************

BAD ED ~絶望の果てに~

イシュタリア(シャロの妹)視点のお話ですね。
ラストは幸せそうですが、肉体がない時点で幸せじゃないね(汗)
ちなみにシャロはこのあと父親とプロレス対決になります。
はっはっは。


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プロフィール
HN:
祈神蒼珠
性別:
非公開
趣味:
小説の創作・小説、漫画の読書・一人カラオケ・ネットゲーム
自己紹介:
初めまして。
祈神蒼珠と申します。
性別は女です。

とりあえずフォルクを見て
頂くとわかりますが
基本は無害……で……す?

Rexiの第二弾PBWで
ある神代七代学園Xを
プレイしています。

以下、持ちキャラ。


フォルク・ノクターン(xa5411)
ローザティア・エルプス(xa5829)
ティース・ハルモーニ(xb0002)
シャルロット・ミューラー(xb4007)
アリア・フォルトーネ(xc0025)

フォルクは陽パドマ
ローザは風ヴォル
ティースは陽キュベ
シャロは風パドマ
アリアは月キュベ
……です。

此処では学園Xの話が
主になります。
コメは大歓迎です。
……出来ればコメ初回は
名乗ってくださると
嬉しいです……(涙)



めっせんじゃ

sousyu01(によによ)live.jp

なんだか笑ってるようにしか
聞こえない擬音を@に変える
といいと思います。
この際も名乗ってくれると
意思疎通が取りやすいやも(爆)
メールアドレスでも
あるのでCPに余裕がなければ
此方から連絡頂ければ
余裕で連絡が繋がります。



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