いちおうにゃんこ！初めのおはなし！

子猫を拾った。

茶色い小さな虎縞子猫。

雨の中震えながら鳴いていたその子猫を、私は拾い名前をつけた。

親愛なる、義弟の名前を。


そしてそれから一週間。

弱っていた子猫も元気になり、やんちゃな行動で私をとても和ませていた。



……きっとこれからもそんな日々が続くのだろうと思っていた。

でも……。


「えるー、おなかへったー」



ど　う　し　て　こ　う　な　っ　た　？




【とある日常】～エル神父とふしぎなにゃんこ～




目の前にいるのは幼い少年。　

猫の耳としっぽが生えているが、間違いなく人間の子供だ。

動揺する私の前で少年は不思議そうに首をかしげる。

尻尾を揺らしながら「ごはん～」とねだる姿は間違いなく、あの子猫……のはずなのだが……。

なぜなのだろう。

その姿は幼いとはいえ義弟の姿に似ていて……。


「アビス……？」

「ん？　なあに、える～。ごはんまだ～？」


うれしそうに笑う少年。そんな彼の姿をみて頭を抱える。


(どうしたらいいのだろう……っていうよりもご飯をどう与えればいいんだろうか！？)
　
(普通に与えたら明らかに少年を猫扱いされてると思われないか！？　教えてください、神よ！)


ある意味切実だ。

教会には住み込みの人々もいるし、普通に考えれば道徳的にマズイだろう。

もしかしたら自分以外には猫に見えているかもしれないから、食卓に招くのもどうかと思われた。

そんな私の葛藤など少年は知らないわけで。

猫の耳をぺたんを寝かすと、悲痛な声で訴え始めた。


「える～～、おなかすいた～～」

「え、ああ、ごめんね。とりあえずミルクだね」


流石にこれ以上放ってもおけないので、とりあえず来客用のカップにミルクを入れて少年の前に出してみる。

少年は一度きょとんとしたもののカップを持ちあげて人間のように飲み始めた。

やはり人間と化しているようだ。

……でもなぜだろうか。

このまま猫が人間になりましたーというわけにもいかないだろう。　

ヘタをすれば悪魔の一種と思われかねない。　

しかし、人になるという現象が一時的なものかもしれないわけで……。

私は深く息を吐く。　悩んでも答えが出ない事を理解したからだ。


「アビス、お腹はいっぱいになったかな」

「うん～。　おなかいっぱいだよ～」


にこにこと笑いながらカップを差し出すその少年の頭を撫でて微笑む。

今はただあの子猫と意思疎通がとれるようになったことを素直に喜ぼう。

そして今まで通りの優しい日常を過ごしていこう。そう決めて。






「える～」

「ん、なんだい？」

「やさい～。しゅ～かく～。おいのり～」

「………あ！！！！」




to be next...

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